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2023.12.11
「耐震等級3」「耐震等級3相当」など地震に対する強度について、新築を考えている方は検討されているかと思います。地震に強い家づくりをどのように行えば良いのか、どう理解すればよいのか。今回は耐震等級3をテーマにわかりやすく解説をします。
地震対策で使用される3つの構造
耐震等級の話をする前に、地震には3つの対策があると言われています。耐震、制振、免振この3つになりますが、違いが分かりにくいかと思いますので、簡単に説明をしたいと思います。
・免震構造
揺れから”逃れる”構造の事を指します。基礎と建物の間にボールやゴムを入れる事で、地面からの揺れを建物に伝えないようにします。コストが高く、メンテナンスも必要なため、住宅用にはほとんど使用されません。横揺れに対しては力を発揮しますが、縦揺れに対しては効果はほとんどありません。また地面と建物を切り離すような作りになっているため、耐風性など地震以外の災害には効果を発揮しません。
・制振構造
揺れを”吸収する”構造の事を指します。地面から伝わった揺れを壁等につけた制振部材で吸収し揺れを防ぎます。主に高層ビルに使用されますが、住宅に使用できる部材も流通しています。揺れ幅の大きい上階に対して効果を発揮します。台北101の最上階にある球体が有名かと思います。地震が発生した際、球体を揺らす事によって地震力を吸収する事で建物へのダメージを小さくしています。住宅では、制振ダンパー設置が主となります。オイルダンパーやゴムダンパーなど種類も様々です。新築の場合、耐震性を高めたうえで+アルファで設置します。柱の間や筋交い部分に設置を行うので、基礎や構造など耐震性の強化に限界があるリフォームでも、制振構造を使うことで地震対策を行う事ができます。配置やバランスが非常に重要となるため、しっかりした構造計算や図面の把握など建築士の理解度が重要となります。
・耐震構造
揺れに”耐える”構造の事を指します。つまり揺れに対して、太い柱や、鉄筋の多い基礎などを使うことにより、揺れに対抗する構造の事です。ほかの地震対策に比べ、費用が安価で住むため、住宅に使われる方法です。上階に揺れが伝わりやすい、複数回の揺れに対応がしにくいなど、ほかの地震対策に対して、デメリットはありますが、住宅においては、まず最初に行うべき地震対策です。屋根や建物の重さ、柱、梁の太さ、基礎の頑丈さ、そして全体のバランスなど、様々な要素を検討する事が重要です。のちに壁量計算、構造計算、許容応力度計算などの言葉が出てきますが、それぞれ耐震性に対しての検討の方法が異なりますので、計算方法も注意する必要があります。
耐震等級3とは?
耐震等級とは地震の力による動きがどの程度の大きさになるまで、構造体(柱・梁など)が損傷しないかを”等級”で示す基準です。現在、耐震等級は1~3まであり、耐震等級3は国が定める最上級の等級になります。
耐震等級の種類
耐震等級には1~3まで等級があり、世の中では耐震等級3相当という表現を行っている工務店やハウスメーカーがあるので、併せて解説していきます。
・耐震等級1
建築基準法で定められている最低限度。この基準をクリアしなければ建築許可つまり、国が家として認めてくれず、建てることもできません。最低ラインと考えてください。耐震性能は震度6強~7は倒壊しない、震度5弱程度であれば損傷は受けないとされています。
・耐震等級2
耐震等級1の1.25倍の耐震性能を持つ事を示しています。震度6強~7は一定の補修にて住み続ける事ができるとされています。災害時の避難場所に指定されている建物は耐震等級2以上が必要になります。
・耐震等級3
耐震等級の1.5倍の耐震性能を持つ事を示しています。災害拠点となる消防署や警察暑などは耐震等級3が必要となります。大きな地震でも軽い保証程度で住み続ける事ができる、地震に対しては強い建物となります。大きな地震は余震でも5以上のものが連続して起こります。耐震等級1や2は1回の地震に対しての想定を行っているため、複数回の地震が起こると言う事を考えると、耐震等級3は必要な認定と言えると考えられます。
※耐震等級3”相当”
これは、住宅性能評価機関から認定を受けていないが、耐震性は3と同等の計算ができている。と言う事になります。つまり自社でのチェックを行っていますが、正式な認定は無いと言う事になります。どのような計算で住宅会社が耐震性能3と示しているのか、購入者自身で判断をする必要があります。また耐震等級3を証明する書面は無いので、税金や保険面でのお得な制度を受ける事ができません。認定には費用がかかるので、それを少しでもリーズナブルにするために相当という表現で、認定をとらない形をとっていると考えられます。
耐震等級3でも計算方法に違いが
・壁量計算
簡単に言うと、壁のみの必要量とバランスを見る計算方法です。一般的な2階建てまでの住宅によく使用されている計算方法ですが最近は、壁量計算では安全では無いと考える工務店さんも増えてきています。特に屋根や2階の重量などが検討されていないので、地震時にどのぐらいの負荷がかかるなどは加味されておらず、簡易的なものになっていると言えます。
・許容応力度計算
基礎・床・屋根・構造材・接合部分の強度までを総合的に検討する計算方法です。
つまり全体のバランスを考えて行う計算方法の事です。木造では3階建ては必須となりますが、2階建て以下については、提出義務はありません。しかし実際の地震発生時にどのような負荷がかかるのかを、建物一つ一つ検討する事ができます。その分設計や計算に大きな労力はかかりますが、将来の安全性、メンテナンス性を考えると許容応力度計算にてクリアしている住宅を手に入れる事が良いと考えています。
実際、壁量計算と許容応力度計算を同じ建物で行い、耐震等級3をクリアしようとすると、耐力壁の量などは許容応力度計算のほうが多くなります。つまり同じ耐震等級3でも許容応力度計算されたほうが、より地震に強い建物という事になります。
※型式適合認定
ハウスメーカーなどは型式適合認定という認可をうけているものがあります。これは事前に提出しているルールに沿って建てれば構造計算は行わずに建築許可を受ける事ができる制度です。ルールに沿って設計してはいるものの、同じ地盤や条件の建物はひとつとしてありません。その建物での計算は行っていないと言う事になります。
耐震等級3(許容応力度計算)のメリット
・地震に強い家が建てられ
これはその通りです。地震に強い家に住むことで、等級のない住宅よりは安心・安全の家に住むと言う事は大きなメリットの一つと言えます。
・家としての価値が高まる
地震に強い家として家の資産価値が高くなると考えます。長期優良住宅なども併せて取得することにより家の価値が高くなり、家を売却するときも価値として認めてもらえる可能性があります。国の方針としても中古物件の再活用や販売促進に力を入れている事もあるので、今後、耐震等級3のような認定を取っているかどうかは重要になると考えられます。
・地震保険が半額になる
耐震等級3を取得している場合、地震保険の保険料が耐震等級のない建物に比べて半額となります。地震保険とは地震に伴う災害によって被害を受けた場合に、使える保険です。津波や噴火なども対象となります。地震保険が半額になると言う事は一般の建物に比べて、被災リスクが低いと考えられているからです。
長期優良住宅を取得すると
耐震等級および省エネが必要な長期優良住宅認定を受けると、下記優遇制度があります。
・住宅ローン控除の適用且つ上限額の4500万円まで適用
・子育て世代に限り 100万円の補助金を受け取ることが出来る
※建築場所等に条件あり
最後に
以上、耐震等級3について色々と解説をさせていただきました。バルジの新築は”耐震等級3”且つ”長期優良住宅”の取得をベースとしています。上記に記載した地震保険の半額以外にも、補助金や住宅ローンの控除の優遇措置などもあります。安全面に加えて様々な制度を利用することも可能です。国も推奨している事なので、色々な優遇政策が取られています。気になる方はお問い合わせください。
耐震等級1でも家を建てる事は可能ですが安心・安全とは言えません。かといって大地震が起こり、耐震等級3の家も損傷、倒壊するかもしれません。ですが、等級1と3では倒壊のしかたが大きく異なり、命を落とさない可能性が高くなると私は考えています。地震で家が壊れる可能性を軽減し、自分自身や大切な家族を守る。耐震性は命と密接に繋がっています。家を建てる時、大げさかもしれませんが、それぐらい重要な事だと思い検討をされてはいかがでしょうか。
バルジ建築設計室
代表取締役社長 一級建築士 岡田邦彦
企画営業室 中嶋高紀